左手は常闇を這う【短編】



一番古い記憶と云えば、私が病によって(もっともその頃はそれが病によることだとは誰一人、私自身でさえ知りもしなかった)癇癪を起こして、周りの人間達との関係がたちゆかなくなると必ず“彼”が間に立って取り持ってくれたものだ。


その頃既に“彼”は私が言葉足らずで伝え切れないいらだちをよく理解し、更に第三者へ橋渡しする為に噛み砕いた形で説明することに関しては、右に出る者などいなかったのだ。