左手は常闇を這う【短編】



“彼”を理解しようと思い始めたのは、“彼”が居なくなってからだいぶ後のことになる。


何故なら私は、それまで、充分に“彼”を理解していると思い込んでいたからだ。


思い違いも甚だしい。


そんな私に嫌気を差して、“彼”が居なくなるのも当然のことなのかもしれないが、私がそれに気が付くまで無駄に時間を費やしてしまったことは誤魔化しようのない事実なのだ。