ルークはともかく自分には無理だ。臆病で、争いが嫌いで、泣き虫で――シンはぎゅっと拳を握りしめる。



「ああそうだ。任せていいか?」

「はい」



ルークが頷くとキースは城へと踵を返す。



シンが弱々しい声で呟いた。



「僕には無理だ……僕は、ルークみたいにはなれない」

「俺みたいにならなくていい、てかなる必要ないだろ?シンのいいところは、誰に対しても優しいほっとけないとこだ。シンはシンでいいんだよ」



ルークはにっと笑って大通りに向かって歩きだす。大通りからはバカ騒ぎをしている大人たちの笑い声が聞こえてくる。まるで、日頃の疲れを忘れるように。



シンはぽろっと小さな涙の粒を零した。



ルークは絶対自分をバカにしなけば、威張る事もしない。



雑踏に消えていくルークの背中を追い、シンは走りだす。



「ルークはほんとうに、強いな……」



これは素直な感想だった。妬んだ時期もあった、弱い上に妬むなんて最低この上ないが、ルークは責めるわけでもなくただ一言、気にしてないと言った。



ルークはそういう奴だ。