あなたは覚えていますか?
あのときのキスを・・・・・・
今なら簡単にできるキスが
あんなに遠かったこと。
ほっぺへのキスをしたあなたは、大きく深呼吸したよね。
そして、勇気を出して近づいて・・・・・・
だけど、唇が触れるにはまだ距離があった。
「帰られへんやん。俺・・・・・・どうしよ」
「うん」
高校生の私達にはタイムリミットがある。
12時まで彼女の家にいるなんて・・・・・・絶対許されない。
黄緑色に光る時計を見ながら、2人で大きく息を吐いた。
突然やってきた。
今までの1時間半が嘘だったかのように
あなたの唇が私の唇に触れた。
時間が止まった。
息ができなかった。
お互い初めてで、キスの仕方を知らなかった。
鼻と鼻が当たった。
どこで息継ぎをしていいかわからなかったね。
長い長いキス。
優しいキス。
その時、男の子なんだって感じた。
純粋そうに見えても、ちゃんとキスができるんだ。
何も知らないように見えて、きっとHな知識はちゃんと持ってるんだ。
これから始まる大人の恋を感じた。
唇を離した涼くんは、私を抱きしめて大きく深呼吸した。
真っ暗な中で、顔を見合わせて笑ったね。
私は今もあのキスを覚えています。
はっきりと。
昨日のことのように。
あなたも、まだ覚えていますか?