男と付き合うことは、始めてではない。


だけど、今までに付き合った男もそう多くない。


大抵は『遊び』で終わってしまうから、「付き合う」なんてあまり考えることがなかった。




「おはよう、葉月ちゃん」


大学の講義が始まる前に、彼はこの前のように私の隣に座り、馴れ馴れしく話しかけてきた。


「……」


「あれ、シカト?」


彼はそれこそ面白いのか、くすくすと私の隣で笑い始めた。


「……何が面白いのよ」


「あ、やっと話した」


「からかってるの、水谷くん」


「名前、覚えててくれたんだ。っていうかさ、『碧』でいいよ、名前」


本当、気に障る。