幸姫の反応に、行き場をなくした幸村の手は、むなしく宙をかいた。
辛そうな、切なそうなその表情に、幸村は、なにも言う事が出来なかった。
「幸村」
静寂を破ったのは、信玄だった。
「幸姫」
呼ばれてそっと、顔を向ける。
優しい顔。
大きくて、暖かな掌が、幸姫の頭をそっと撫でた。
「ちゃんと、伝えたいことは口にしなくては伝わらぬ」
言われている言葉の意味が、分からないわけではなかった。
だけど、それがどうしても難しくて、うまく身体が言う事を聞いてくれなかった。
「怖がることはない」
そう言って、信玄は幸姫の身体を持ち上げると、そっと、幸村の前におろした。
「幸村」
「はっ」
頭を下げる幸村に、信玄は少しだけ、小さなため息をつくと、小さく一言呟き、その場を去っていった。
あまりにも小さな声で、幸姫には何を言ったのか聞き取れなかった。
だが。
その言葉を聞いた幸村の表情は、一瞬にして固まっていった。
辛そうな、切なそうなその表情に、幸村は、なにも言う事が出来なかった。
「幸村」
静寂を破ったのは、信玄だった。
「幸姫」
呼ばれてそっと、顔を向ける。
優しい顔。
大きくて、暖かな掌が、幸姫の頭をそっと撫でた。
「ちゃんと、伝えたいことは口にしなくては伝わらぬ」
言われている言葉の意味が、分からないわけではなかった。
だけど、それがどうしても難しくて、うまく身体が言う事を聞いてくれなかった。
「怖がることはない」
そう言って、信玄は幸姫の身体を持ち上げると、そっと、幸村の前におろした。
「幸村」
「はっ」
頭を下げる幸村に、信玄は少しだけ、小さなため息をつくと、小さく一言呟き、その場を去っていった。
あまりにも小さな声で、幸姫には何を言ったのか聞き取れなかった。
だが。
その言葉を聞いた幸村の表情は、一瞬にして固まっていった。


