…放課後、夏季は浮かない顔をしたまま、まだ騒がしい教室を一人、後にした。その後から、圭織が追いかけて来た。
「夏季!一緒に帰ろうよ。」
「ごめん。今日は、一人で帰りたいの。」
「…そっか。分かった。でも、どうせ校門までは一緒でしょ?」
そう言って、圭織はそっと夏季の手を握ると、優しく微笑みながら言った。
「…早く元気出して。夏季の笑顔、誰よりも大好きだから…」
「うん…」
二人は、校門の近くまで、ただ手をつないだまま無言で仲良く歩いていった。失恋し、大切なノートまで無くしてしまって、打ちひしがれている夏季に、今の圭織はとても優しい存在だった。
慰めの言葉は無いけれど、夏季の言葉を受けて放っておくでもなく、そっと優しく握ってくれているその手が、今の夏季にとっては有り難く思えた。
―女友達って、いいものだな。恋に縁がなくったって、私は…―
温かな気持ちに包まれながら、二人が校門の近くに差し掛かった時、突然、誰かがひょっこり二人の目の前に姿を現わした。