やっぱり、大事な話をするときくらいは敬語だよね。親しい仲にも礼儀あり、なんて、先生が前に言ってた気もするし。
あ、でも。陽路に敬語なんて使ったこと、数えられるほどしかなかったな。先輩って呼ぶのも、入学したての時に調子に乗って呼んだ以来だし。
ゴクリとつばを飲み込み、緊張を隠すように口を開く。
「あのさ…、陽路…先輩……。」
意を決して口を開いたものの、思うように言葉は紡げない。そんな中、先輩っていう単語に反応したのか、陽路が勢いよく顔を上げた。
そのとき、気づいてしまった。
陽路の目が潤んでいること、そして、抱いていたクッションに二つのシミができていることに…
言葉にはしないけど、あえて尋ねたりしないけど。今、陽路、泣いていた。
否、泣いていたというより、ただ静かに涙を流していた。

