全てがキミだった

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「このまま、ミサキのところに飛んで行けたらいいのに」
 

たまに、公平は突拍子もない事を言い出す事がある。


今も、突然両手を大きく開いて自分の体に翼をはやしていた。


「こんなに大きな翼が俺の背中にあってさ、飛びたいときに飛ぶんだよ」

 
ミサキのとこまで――。
 

語尾の方は殆ど公平のひとり言のようで、わたしの耳の鼓膜は、その囁きのような公平の声を拾う事が出来なかった。
 

いや、もしかしたら、わたしの細胞が完全に拒否していたのかもしれない。


『ミサキ』この三文字は有害物質だ、と。
 

だけどどうしてだろう。


ミサキの話をする時の公平は切なげでありながら、どこか誇らしげでもある。
 

苦しかった。


わたしのこの気持ちのやりどころを、完全に失ったと思った。