とある街の総合病院。

その小児病棟に原因不明の難病に苦しむ男の子がいた。

風邪の様な症状で訪れた病院。

その日のうちに緊急入院となってから、3年の月日が流れていた。

筋肉が次第に衰えていく病に犯され、いつからか寝たきりとなっていた。

「歩(あゆむ)、あなたの好きな猫の写真よ。遥おばさんから頂いたのよ」

ゆっくりと目を開けた歩に母は写真を見せる。

「かわ、いい……」

力なく微笑む歩。

一枚また一枚と写真をめくる度に一生懸命に目を動かす。

歩の身体からは沢山の半透明な管が伸びている。

腕や足の筋肉だけでなく、内臓を動かす筋肉までもが衰えてしまった為に、機械の力を借りなければ生命を維持することもできないのだ。

「あと少しで歩の好きな桜が咲くね。そしたら歩の病気もきっと良くなるからね」