「…………あの日………。」
五穂が口を開いた。
「貴方様を助けたことを、主様に知られてしまったのです………。」
五穂は顔を暗くした。
「御屋敷を住み替えると仰られた主様は……、
私を貴族の屋敷に…お売りになりました………。
あれから十一年…。
私は、身勝手ながらも、
炎尾様のことを…忘れておりました……。」
炎尾は何も言わなかった。
当時、五穂はまだ六つ。
まして、屋敷の辛い仕事をさせられていたのだから、覚えていなくて、当然だ。
「ですが…………私のせいで…貴方様が、そのような、辛い目に遭われていたなんて…………っ。」
炎尾は、何も言わなかった。
ただ黙ったまま、五穂を抱き締めた。



