その客というのは、この町一番の長者のことだった。 女郎屋にあししげく通い、五穂に目をつけていた。 そしてついに頃合いを計り、五穂を買うことにしたのだった。 「女、明日に儂が買ってやるからな。 儂の下で、一生奉仕するのだぞ?」 それが長者の口癖だった。 当然、五穂は嫌だった。 品物として売られるのも、好きでもない男に仕えるのも。 だが、拒むことは出来ない。 明日には、五穂は買われてしまう。