その手に触れたくて


「えー、あたしらチャリで行くの?」

「隼人らに乗っけてもらえよ」


表情を崩して夏美が言うと、あっちゃんはあたし達の後ろを顎で指す。

夏美とあたしは後ろを振り向くと、隼人はポケットに両手を突っ込みダルそうに階段を下りてくる。


「俺、今日原付ねぇ」


さっき話してたのが隼人にも聞こえてたみたいで、隼人は溜息混じりに言う。


「えっ、そうなの?じゃあナオのしかないじゃん。なんだよー、結局はチャリじゃん」


夏美は深く溜息を吐き出し、あたしの手を引いて空き地を出る。


「そんなに遠いの?」

「遠くはないけど…」

「だったら問題ないじゃん」

「いや…、そーじゃなくてかなりキツイ坂があるの。その上に焼肉屋があるんだけどホント、チャリではしんどいんだよ…」


夏美の家まで行き停めていたあたしの自転車を夏美は取り出し、籠に鞄を入れてサドルに跨る。