その手に触れたくて


その先を言えずになってしまったあたしは挟んでいた体温計を取りだすと、スッと隼人が体温計を奪い取る。


「7度9」


呟いた隼人は深いため息を吐き捨て顔を顰めた。


「やっぱり高いわね。とりあえず寝てて。で、橘くんは教室に行きなさい」

「痛ってーなぁ!!」


バシッと隼人の背中を叩いた先生に隼人は声を上げて眉を寄せる。


「もうすぐ始まるわよ」

「俺もここで休む」

「何、言ってんのよ」

「つか、俺も病み上がりだし」

「病み上がりみたいな顔してないけど」

「表にだしてないだけ」

「嘘ばっかし…」

「嘘ついてねーよ」


隼人は面倒くさくそう言って、パイプ椅子を引っ張りあたしの横で腰を下ろす。


「もぉ、ここは橘くんの寝る部屋じゃないんだから」


先生は呆れた声をだしあたしの額に冷たく冷えたタオルを乗せた。

ヒヤっとする冷たさが心地いい。


「すみません…」

「すぐには下がらないと思うけど…」


申し訳なさそうに呟くあたしに先生はそう言って隼人に目を向ける。