「これは運命なのよ、久志くん」
しのぶは手にしていたポーチを開けた。
そこから取り出されたのは、手術用のメスを思わせる片刃のナイフ。
「お願い、あたしの望みを叶えて…」
しのぶはうっとりとした表情でナイフを差し出した。
東の背筋に冷たいものが走った。
抗えない自分がそこにいたからだ。
ゆっくりと、震える手でナイフに手を伸ばす。
その時かすかに風が吹きブナの木を揺らした。
葉のざわめきが耳に届き東はほんの少しだけ自分を取り戻した。
チャンスだった。
次の瞬間、東はしのぶに背を向けると、その場から走り出した。
公園の柵を乗り越え、全力で走った。
必死だった。
ー逃げなければ、殺してしまうー
東はどこまでもどこまでも、走り続けた。
しのぶは手にしていたポーチを開けた。
そこから取り出されたのは、手術用のメスを思わせる片刃のナイフ。
「お願い、あたしの望みを叶えて…」
しのぶはうっとりとした表情でナイフを差し出した。
東の背筋に冷たいものが走った。
抗えない自分がそこにいたからだ。
ゆっくりと、震える手でナイフに手を伸ばす。
その時かすかに風が吹きブナの木を揺らした。
葉のざわめきが耳に届き東はほんの少しだけ自分を取り戻した。
チャンスだった。
次の瞬間、東はしのぶに背を向けると、その場から走り出した。
公園の柵を乗り越え、全力で走った。
必死だった。
ー逃げなければ、殺してしまうー
東はどこまでもどこまでも、走り続けた。


