新郎新婦が席につくと、急に正面に明かりが灯った。

スキャナーで二人の馴れ初めをまとめた映像が映し出された。



そして、新郎の友人挨拶の後に、新婦の親族からの挨拶。

和子は正紀の写真をしっかりと胸に掲げながら壇上へと登り、深く一礼をした。


「明美さん。結婚おめでとう。今日この日にあなたの母親として出席させてもらえているのを本当に感謝してなりません。」

和子の挨拶に佐野の目がすぐに潤む。

「みなさん、私は新婦、佐野明美の本当の母親ではありません。この遺影に写る私の息子と新婦がお付き合いをさせて頂いていた。それだけの関係なのです。」

和子の話に会場のあちこちでどよめきが起こった。

「それでも明美さんは私を本当の母親の様に接してくれました。そして私が病で倒れると、勤めていた学校を辞めてまで看病をしてくれたのです。」

涙を堪えきれなくなった和子のしわくちゃの瞳から次々と涙が溢れていく。

そしてまた、佐野の瞳からもとめどなく涙が流れ出ていた。

「明美さんは前にこんな話をしてくれたことがあります。明美さんには私の息子正紀とした二つの約束があったのだそうです。1つは大好きなタバコを息子の命日だけは吸わないこと。」

その約束に会場から笑い声が零れた。

そして、そんな会場はすぐに涙を流す人ばかりになる。