放課後、香奈が淋しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「松原君が先に帰っちゃったんだ…一緒に帰りたかったのに…」


「香奈…」


松原君の心が読めない…
付き合ってるっていっても松原君は何もしてない。

一緒に帰ったり、手を繋いだり。

教室で話してるのも見たことない。


「彩夏。香奈と一緒に帰ってあげて」


「うん。分かった。香澄は?」


「私は一人で帰りたい気分だから…」


彩夏は分かったと頷くと二人で教室を出て行った。


何分か経って私も教室を出た。




夕日が沈みかけていた。


細長い影が道にうつっていた。



沙織さんが生きている…


このことを知っているのは私と山本君…


松原君が知ったら…きっと、沙織さんのもとへ行くかもしれない。


そう考えると怖くなる。



その時、後ろから声が聞こえた。


「お〜い」


振り返らなくても誰だか分かった。


「松原君!」


「なんだよ…なんか怒ってない?」



「怒ってない…」


松原君は私の隣に来た。


「最近話してないよな」


そうかな…


「やっぱり怒ってない?」


怒ってないよ…


「なんで黙ってんの」


「黙ってないよ!」


「怒ってんじゃん…言いたいことあるなら言えよ」


「私の気持ちなんて、どうだっていいよ…」


私よりも、沙織さんでしょ?


「どうでもよくない。気になる」


………


「単刀直入にいうけど…」


「おうっ」


「どうして、香奈と付き合ってるの…」



「……」



松原君の顔が曇るのが分かった。


「好きなの…?」


松原君は私から視線をそらした。


「…そっか。松原君も新しい恋を始めようとしてるんだって思った」


「蒼井…」


「でも…やっぱり、沙織さんは強いね…」


私は歩き始めた。


「待てよ…」


松原君が私を追いかける。


「もうこれ以上香奈を悲しませないで…」