そんな穏やかな両親に育てられた良祐も、滅多なことでは怒らないし、常に笑顔を絶やさない、両親の良いところを受け継いで成長した。
二人の願いは、何の苦労もなく、彼に押しつける迄もなく、自然に息子・良祐へと伝わっていたのだろう。
言葉にしなくても、伝わる絆。
良祐は、いつも感謝の気持ちを忘れずに生きてきた。
実の子供のように可愛がってくれるご近所さん、仲良く遊んでくれる友達。
勉強や道徳を教えてくれる先生や、自分の立場になって一緒に悩んでくれる先輩。
そして、自分を産んでくれた母、それを支えてくれた父。
「あなた、産まれた時すぐに泣かなかったのよ。みんな焦っちゃってね。お医者さんが、良祐を助けてくれたのよ」
蘇る、母の言葉のなかに出てくる、お医者さん。
今、自分はたくさんの『ありがとう』の中で生きているのだ。
『ありがとう』は、お金もいらないし、特別何かが必要なわけじゃない。
ただ、感謝の気持ちがあって、それを伝えたいと思う心があって、
『ありがとう』
って、言いたいんだ。
みんなみんな、『ありがとう』