「……おはよう」 ぼーっとしてはいるが、ようやく反応がかえってきた。 いまだ緩慢な動きでいる賢杜。 俺は耳元に唇を寄せた。 ふ、と息を吹きかけると、面白いくらいに反応があった。 ガタンガシャンと音を立てながら、賢杜は後退りをしてへたりこんだ。 大の大人が、まるで歩き始めたばかりの子鹿のように足をガクガクさせている。 いたずら心に火のついた俺は、追いうちをかけるかのごとく、「そんなに良かった……?」と言ってやった。