俺は、賢杜の顔にそっと手を伸ばした。 顎に少し髭が残っていて、チクリと俺の指に主張して来た。 それに構うことなく、賢杜の顔に唇を寄せる。 少したじろいだ様子だったが、俺は伸ばした手を彼の後頭部へ回し、逃げられないようにした。 もちろん、賢杜が本気で逃げようと思えば逃げられたろう。 だけど、彼はそうしなかった。 たった一言、力ない声で「やめてくれ……」と言っただけだった。