「ねー桶川さんじゃなくて、姫さんって呼んでも良いよね?……姫さん、やっぱ超可愛い。尚志には勿体ないわ」


「な……は、は、はぁ!?」


早苗ちゃんが、まるで私を口説くような甘々な目線を送って私を見つめて来る。


……あの、一体全体、なんでしょうかこの状況。全く理解出来ません。


「早苗!俺の姫さんに引っ付くなっつぅの!はーなーれーろー!」


「なんだよ。いいじゃん!ケチンボ!俺が年上キラーなの知ってるくせに!」


……待て待て。ちょいちょい、え、ホントに待って貰えませんか?今の、私の都合のいい聞き間違いじゃないよ、ね?


「さ……早苗、ちゃん、さぁ?今、自分のこと『俺』って言った?」


「うん、そうだけど……あっ!もしかして勘違い、されてる?」


早苗ちゃんは困ったように苦笑いしこほんと可愛く咳払いする。


「俺……こんな見た目と名前と声だけど、立派な、男だよ?なんなら色々、試してみる?」


うふふと笑った早苗ちゃんを良く見ると、確かに、女の子には無い、喉の仏様が上下に動いている。


う、う、嘘だと言って!何これ、私の嫉妬、恥ずかしすぎるやつじゃん!