「なんかそれにさ、あいつ、根っからの悪人じゃない気がする……ムカつくけど嫌えないし」


ナオちゃんが不服だと言わんばかりにしかめっつらで言う。


私もそう。最低最悪のクソ野郎なのに、やっぱり嫌いにはなれない。だから秋斗って不思議なんだよ。


あんな自己チューで嫌われそうな奴なのに、一緒にいる人を楽しくさせるようなそんな変わった奴。それが、秋斗って人間なんだ。


「んー、あれかな、結婚を前にしてマリッジブルーとか」


「あはは、ナオちゃん、秋斗は花嫁じゃないんだから」


ナオちゃんの呟きを笑ってしまったものの、男の人もマリッジブルーになったりするのかな。


やっぱり分からない。結局いくら考えても、秋斗の真意は分かりそうにはないよ。