「もういっそのこと、私と駆け落ちしちゃうか?男なんか捨ててさ」


「うぁぁん!いくみぃぃ!」


私は、女なのに男らしくてカッコいい伊久美に抱き着き、女の友情をひしと確かめる。


それを幸四郎が、すごーく迷惑そうに見つめていた。そりゃもう、心底迷惑そうに。


そして、ふいに携帯を弄り出す。


「ちょっと!何する気っ!?」


「決まってるだろ!尚志君に電話するんだよっ!お邪魔虫引き取りに来いってね!」


おっ……鬼!迷惑かけてる自覚はあるけど、傷心の私に対して何てことを!


言葉にはしないけど、非難の目で見つめる私と伊久美に、幸四郎はわたわたと慌て出す。


「う……嘘だからそんな目で見ないで!伊久美もそんな引くわーみたいなオーラ出すなって!」


幸四郎は困ったような顔をして、携帯をポイとテーブルに投げた。