二人で下に降りれば、玄関先には智さんとお母さんの姿。


心なしか、二人の距離が少しだけ歩み寄っているように見えるのは、きっと気のせいじゃないと思う。


「よっ!尚志!またそのうち早苗と三人で遊ぼうな!」


「はい!桶川さん、智さん、お邪魔しました!ありがとうございます」


俺は頭を下げてお辞儀をし、スニーカーに足を通す。


結局認めてもらうどころじゃなくなっちゃったけど、この家族が家族としての距離感を良いものに出来たのなら、今回は自分を褒めてあげたいな。


「広瀬さん!」


そう思いながらドアを開こうとしたその時、お母さんに引き止められた。


「月に一度は、姫子さんに連れてきてもらって私にお茶を点てて下さい。貴方のお茶は少し濃すぎるから、指導致します。それと、あの和菓子美味しかったです。次回来たときはレシピを教えて下さいね」


相変わらず、無表情なお母さん。眉ひとつピクリとも動かさないで、そう俺に告げた。