……違うよ、それは違う。お母さん、お金だけじゃ『心』が満たされないんだよ。


裕福じゃなくても、少なくとも俺は幸せだから。


父さん母さんが元気で、早苗が煩くて、そして何よりも、姫さんが隣で笑ってくれてる今が、俺は幸せなんだよ。


姫さんはお母さんの発言に、心底腹を立てたみたい。怒りに満ちた顔で、お箸をテーブルへと置き、勢い良く立ち上がった姫さん。


「一体何ですか姫子さん。食事中ですよ?」


普段こんな風に怒ることのない姫さんにも、変わらず冷静なお母さん。


それに比べて姫さんは完全に冷静さを失ってる。


拳は強く握りしめて、体はわなわなと震えているんだ。


こんな姫さんを見てると、俺の心もピリピリ痛んで、涙さえ出てきそう。