バンっと乱暴に開かれた最後の砦のリビングのドア。


「なんで!お前ん家に『大人になりたいチョコレート』がいんだよ!?」


「サトシ、お願いだから静かにして……近所迷惑なうえ、子宮がもげそう」


騒音の持ち主に、私は精一杯唸るように訴えた。


「ちょっと……姫さん、この人誰?」


ナオちゃんは何か勘違いしているらしく嫉妬で瞳をメラメラさせている。


そういえば、前にもこんなことあったよね。幸四郎がうちに来たときだったっけ。


っていうか、今回は百パーセント、嫉妬の対象にはなりません。


「この騒音バカ……恥ずかしながら私の弟。よーく見たら同じような顔でしょ?」


そう、このハニーブラウンの髪の毛のチャラ男は、紛れも無い、血の繋がった私の弟。


桶川智、20歳。大学生のがさつな弟なのです。