「俺達が付き合い始めたのは俺が高校になった年の夏でね。バレたらママがクビになるっていうこともあったし、苦労したよ」


目を細めて柔らかく笑うパパは、私とそんなに変わらないのにとてつもなく大人に見える。


「そんな関係を続けて二年ちょっとの時、俺がもう少しで卒業って時にママの中に命が宿ったんだよ」


それが、きっとナオちゃんだったんだ。


そう気付いた私はぐっと表情を締めた私に続きを話してくれたのはママ。


「ママね、パパにそれを内緒にしてた。そして別の人の子だって嘘ついて、一回は別れたの。……尚志は、私が一人で育てようって心に決めて」


「俺とママはそれから二年別れて暮らしてたんだ。だけど、俺がハタチで短大を卒業して就職したときにママに再会した。一人で尚志を育てて苦労しただろう。ママは随分痩せてた」


女手ひとつで子供を育てる大変さは、母子家庭の私には良く分かる。ママ、大変だっただろうな。


「……その姿を見て思ったんだ。例え自分の子供じゃなくても、愛する人の子供を守ろうって、素直に思えた」


その想いに、パパの心からの言葉に、まっすぐに私を貫いて、胸にじわじわと浸透した。