今日も私は、時計塔に昇る。





「よ、夕枝。また来たのかよ」



やはり、上から声が降って来る。



見上げると大きな時計の文字盤の裏と、ねずみ色のコンクリートがそこにはあるだけ。


シュウの姿は、ない。



――フッ



突然、耳のあたりに一瞬の違和感。


自然の風ではない。

息を吹き掛けられたんだ。



気付いてバッと背後を振り向くと、耳を押えた私のすぐそばにシュウがいる。



体は知らず知らずのうちに、吐息を漏らしていた。



彼は悪戯が成功した時の子供の顔をしている。

ニヤリ笑い。

意地が悪いことこの上ない。




その顔を見ていると……猛烈に、腹が立って来た。