五月になった。

入学式から約一ヶ月経ったこの時期は、新しいことへの意欲に燃えていた生徒たちがダレ始める頃でもある。



「夕枝ー、ちょっと聞いてよー」



昼休み。

歩美と私は、職員室の片隅でお弁当をつつく。

お弁当はお互いに手作りなのだけれど、歩美の出し巻き卵がものすごーく美味しいので、それだけは多めに作って来てもらっている。

うーん、美味しい。



「なぁに? 歩美」


「さっきのクラスのガキどもすっごくムカつくのっ! 新任だからってなめるんじゃないわよっ!」



生徒たちからの被害を受けるのは主に下っ端教師たち。

私も歩美も例に漏れず、生徒に振り回されている。

普段汚い言葉遣いをしない歩美を半ギレさせるほどの強者クラスまである。



「まぁまぁ……。そりゃあ、私も腹立つけどね」


「でしょでしょ!? でもそのくせ、慎ちゃんは女の子に人気あるの!」



不機嫌になってる原因が、歩美のそのセリフでハッキリとした。

結局は、恋する女のしがない嫉妬心なんだ。