そうして、数年が過ぎた――。







「初めまして。新任の沖田 夕枝です。現代文を担当します。みなさんよろしくお願いします」



私は黒いパンツスーツに身を包み、母校の教壇の上に立っていた。

季節は、春。

四月の、とある麗らかな日。

目の前には、教科担当をすることになったクラスの生徒たちが居る。



「よろしくー沖田先生」


「先生タメみたいだよなぁ~」


「彼氏いるんですかー?」


「男子たちうるさーいっ! 静かにしてよっ!」



教室に響くたくさんの元気な声。

この教室に、たくさんの思い出を残していくのだろう、生徒たちの柔らかで若々しいざわめき。

ふっと、頭の中に、高校生時代の思い出がよぎった。


……可能性や未来を夢見てた日々を懐かしいと思える日が来るなんて、当時はこれっぽちも思わなかった。