「まぁ、あれだ。これが、あの教会から行き来してる理由だな」


『満足したか?』と、あたしの頭を撫でてくる。


「なんで、こんなに優しいのに、みんなの前ではつんけんしてるの?」


嗚咽を零しながら、途切れ途切れで言う。


彼は、うーんと考えてから、


「今更、みんなのイメージを変えるなんて無理だろ」


少し困った顔をしながら、頭をかいていた。


「だけど、あんたがずっとみんなに避けられ続けるなんて、あたし耐えられない」


もう、事情を知ったからには、みんなの勝手な噂を聞き流してなんかいられないよ。



「そうだっ!!
あたしがみんなに言うよ。蔵島恭平は優しい人だって。
だって、あんただって本当は一人は嫌なんでしょ?」

「いいよ、何も言わなくて」

「なんで?」

「わかってくれる奴らだけわかってくれたら、それでいい。贅沢はいわねぇよ」


――ドクンっ。

まただ……。


彼がただ微笑んだだけなのに、あたしの鼓動が暴れだす。


ギューッと締め付けられて、苦しくなる。

きっと、調子が狂い過ぎたせいだ。


彼は、椅子を元の位置に戻すと、両手をポケットに突っ込んで歩きだした。


「ほらっ、一つの疑問は解決しただろ?早くいかねぇと、昼飯食いっぱぐれるぞ」


『早く』と、ドアの前で立ち止まる。


あたしは、どうにかしたいと考えていた。


彼に高校生活を楽しく過ごさせてあげたい、と。


ずっと、笑顔でいてほしい。


こういうのは、時間が解決してくれるものなのかな。


いつか、みんなで笑える日は来る?


きっと、来るよね。