「ねぇ、真由」

「なに?」

「蔵島くんさ、みんなが思うような怖い人じゃなかったよ」

「えぇ?嘘だぁ。
なんで?なんかあったの?」


さっきまで小声だった真由が、突然大声を上げた。


騒がしい教室に響き渡り、何人かのクラスメートがあたし達に注目する。


一瞬冷や汗が背中を流れた。

今度はあたしが小声で真由に顔を近づける。


「別に、なにもなかったけどさ」

「なかったけど?」


蔵島恭平の性格が、みんなのイメージと違うと思ったのは――。


「……直感?」

「なに、その疑問形」


あたしが少し間をおいて答えると、真由がふふっと笑った。


あたしも自分で答えておきながらなんだかおかしくて、真由と一緒になって笑った。


だけど、冗談なんかじゃない。


昨日の蔵島恭平の表情は本物だった。


すごく優しい目をしていた。


彼はきっと、不器用なだけなんだと思う。