「恭ちゃーん!」

「うおっ」


突進してきた二人に抱きつかれ、蔵島恭平はバランスを崩して豪快に尻もちをついた。


「だから、あぶねぇって言ってんだろが」


大声で彼が注意する。


厳しく、だけども優しい口調で。


その姿は、まるで父親のようだった。


騒音の犯人は、テーブルの小さな椅子に座る人物。


小さな男の子と女の子だ。


幼稚園の黄色い鞄を提げたまま、きゃっきゃ騒いでいた。


「恭ちゃん、ただいまっ」


彼の胸にうずくまる二人が、無邪気な笑顔を向ける。


「ねぇねぇ、今日はなにして遊ぶ、なにして遊ぶ?」


彼は二人を抱きかかえながら立ち上がると、あたしの方を振り向いた。


「わりぃ、こいつら帰ってきちまったし、ゆっくり話し出来ないわ」

「あの……
その二人は?」


初めて会う小さな子供に目を向けながら首を傾げると、彼は『あぁ』と言いながら頭をかいた。


「俺の弟と妹」


腕の中でジタバタ騒ぐ子供たちに顔をつままれている。


「また今度ゆっくり来い。
あいたたっ」

「……うん」


小さく答え、その場を後にした。


何気に、また来る約束までしちゃったよ。


この短時間で、あたしはこいつとかなり近づいた気がした。


何一つ、疑問は解決しなかったけれど。