別に構わない――。


変な噂が流れても、あたしはそんなものには負けない自信がある。


それよりも、あたしは今の疑問を解決したいの。


「やっぱ、アホだな。 おまえ」


そう言って、あたしのしつこさに呆れたのか、彼がふっと笑った。


――笑った。


あの、蔵島恭平が……


不覚にも、その笑顔に心臓が高鳴った。


彼の笑った顔は、優しくて温かかった。


まさか、こんなヤンキーからあんな笑顔が見られるなんて、少なくとも学校のみんなは思わないはず。


彼の微笑みに戸惑った。



その時だった。


玄関の方から、ドタドタっとお尻に伝わる騒音が聞こえてきた。


それは複数の足音で、徐々に大きくなる。


突然の騒がしさに目を白黒させていると、彼が小さく、『ったく』と言って立ち上がった。


それとほぼ同時に、リビングに入ってきた騒音の犯人。


「こらっ、あぶねぇから走るなっていつも言ってんだろ!」