「なにやってんの、ちゃんと前見て歩きなさい」

「ご、ごめんなさ……」


痛さを堪えながら、ぶつかった相手を振り返る。


だけど。

その時にはもう相手の顔なんて見えなくて、あたしの謝罪の言葉が聞こえたのかさえもわからない。


ただ、あたしのぶつかった相手は、やっぱり男の人だったんだってわかった。


だって、あのゴツゴツした肩は男の人しかあり得ないから。


それに、なんだあの格好。


髪を金髪になんかして、ダボダボの服なんて着ちゃってさ。


ヤンキーもインフルエンザか?


あたしと入れ違いで病院に入っていく派手な彼の背中を見送りながら、あたしはこんな事を思っていた。





これが、恭平との出会いだった。




病院の入り口で出会った彼の背中はとても大きく感じて、


髪の色と服装から、あたしとは無縁だな。


まず第一にそう思った。


目つきも悪くて、性格もわるそう……


それが、咳込みながら病院に入っていく彼に抱いた第一印象だった。