「おじゃまします」
シンと静まり返った廊下に、あたしの声が響く。
歩く度にぎしぎし鳴る床の音が、どこか懐かしく感じた。
「リビング、あの暖簾の先にあっから。
俺着替えてくるし、勝手に座ってて」
そう言って、廊下の一番奥にある部屋を指差した。
少しひんやりする廊下を歩き、指示されたリビングへと向かう。
暖簾をくぐると、すぐに何かのいい匂いに包まれた。
ぐるっと見渡すと、キッチンでお鍋が煮えたぎっていた。
グツグツとリズムのいい音がする。
誰かいるのかと背伸びをしてキッチンの中を覗いたが、上へと昇る蒸気以外、あたしの目には何も入ってこなかった。
誰もいない……
大丈夫かな。
そう思いながら、リビングの中央に置かれているテーブルに腰かけた。



