大きな彼の背中。


ボタンを1個もかけていない学ランが、時々風になびく。


地面に足を引きずりながら歩く、彼のだらしない背中に視線を向けた。


本当に、何を考えているのかわからない人だ。


よく口数の少ない男はかっこよく見えるなんて言うけど、ここまで無口だとただの無愛想な人だとしか思えない。



一時、沈黙のまま二人歩き続ける。


時々頭上を飛んでいく鳥の鳴き声と、カラカラと車輪の乾いた音だけが、この沈黙の中異常に大きく聞こえた。


その時――。


あたしの前を無言で歩いていた彼が、突然歩みを止めた。


そして、眉間にシワを寄せながらあたしを振り返る。