「俺、昨日、あのグローブを眺めてたんだ。
そろそろ、やべぇ気がして……」
「………」
「リアルにわかってさ、無性にやりたくなった……野球。
もっと早く動いていたら、もしかしたら俺も甲子園に行けてたのかなって……。
そうしたら、親父の夢も叶ってたのになって。あん時、おまえに言われた時さ、おまえに引っ張られるままに野球やっとくべきだったのかなって、ちょっと後悔してる」
久し振りに見る、恭平の弱々しい姿に、かける言葉が見つからない。
ただ、頭を垂れる恭平を見る事しか出来なくて、
震える肩に、手を乗せる事が出来なくて――。
「昨日、大ちゃんに言われたんだ。
あの時、俺がおまえを殴ってバイトをさせなかった理由もわからないのかって……。
そんなのわかるかって感じだよな……。
だけど、一発殴られて、大ちゃんの表情を見て、やっとで理由がわかった。
大ちゃんはあの時、俺に野球をやれって言ってくれていたんだって――。
昨日初めてわかったんだ」
遅すぎじゃね? と、頭をかきながら苦笑した。



