「ちょっとだけ」
そう言って、軽く笑った。
「どうして、そんなところ怪我したの?」
あたしが聞くと、恭平は少し間を開けて答えた。
「今の体育、マラソンじゃん?
外走ってる時、曲がるときに早く曲がりすぎて、フェンスにぶつかってさ。ははっ、そん時すげぇ音でさ。ガシャンって。フェンスが古くて、サビにやられた」
笑いながら言った後、階段に腰かけた。
『風呂、どうやって入ろう』なんて、とぼけながら。
フェンスにぶつかるなんて――…。
「右目……?」
恭平に言葉を落とすと、恭平の眉がピクリと動いた。
「右目、見えにくかったんでしょ?」
また涙が浮かんでくる。
恭平の前で、涙を流しちゃいけない。
そう思うのに、なんでうまく操作出来ないんだろう。
あたしが嗚咽を抑えていると、恭平が息を絞り出すように話しだした。
「――今しか、ないから」
両ひざに手をついて、前かがみになる。



