テーブルの上のラップのかかったお皿を見ると、寂しくはなるけれど、

今更寂しいなんて、そんな恥ずかしいことは言えない。


もう、大人だし?


それに、今はこうやって友達からひっきりなしにメールも来るし、別にいい。


コーヒーを入れてミルクをかき混ぜる。


鼻の奥を刺激する苦い匂いが、なんとも心地いい。


優雅にコーヒーが飲みたくて、ゆっくりと口に含んだ。


その時――。


ふと、あたしの視界の隅に、壁に掛けてある時計が映った。


ブハっとコーヒーを噴き出して、後片付けもせずに鞄を持って家から走り出た。


片時も携帯を離さず持っていたのに、何で時間を気にしていなかったのかと、全力で走りながら自分を恨んだ。


どうするよ……


完璧遅刻だ。


どんなに近道をしても、あたしのこの足だと意味がない。


そもそも、近道なんてあるの?


焦る頭で考えると、余計拗れてくる。


ただでさえ、道がわからないのに。


こうなったら、一か八かでどこか曲がってみるか。


そうするしかない。


ええいっ!


もう、ここ曲がっちゃえ!!