そう言えば、さっきあたしを助けようとしてくれた時も、『莉奈』って名前で呼んでくれてたよね。
さっきは、あんな状況だったから気にならなかったけど……。
今思い出すと、急に恥ずかしくなってくる。
「恭平……」
彼に届かないように、そっと呼んでみる。
うん、悪くない。
恭平、恭平。
心の中で、何度も呼ぶ練習をした。
「キモっ!」
あたしのニヤける顔を見て、彼が震えあがる。
「うるさいっ!」
そう言いながら、あたしは彼を追い越して教会へと続く坂道を全力で走った。
風を全身で浴びるのはとても気持ちがいい。
「手紙っ、集めてくれてありがとうっ!」
面と向かって言うのは、なんだか恥ずかしくて、後ろから着いてくる彼に走りながら叫んだ。
「あーっ?なんてっ?」
後ろから、彼も叫ぶ。
「別に?なんでもなーいっ!」
恭平、ありがと。
あたしの手紙、ごみ箱から拾ってくれたんだよね。
嬉しかった。
恭平が、あたしを見ていてくれた事。
あたしね、気づいたんだ。
――あたし、恭平の事が好きだ。
「俺の事で悩ませて、悪かったなっ!」
彼の言葉であたしは立ち止まり、後ろを振り返った。
「えーっ!なんの事ーっ?」
なんて、とぼけてみせた。
くすぐったい。
彼の事が好きだと気づいて、なんだか走らずにはいられなくなった。
あたし、恭平の傍にずっといたい――。



