誰に誘われたわけでもなく、自分からあたしのアパートを訪れた結崎さん。
他愛ない世間話は、限られた時間を惜しむようにして続く。
「ねぇ、結崎さん」
結崎さんのこの訪問が、ただの気まぐれで、次はないことを予測したあたしは勇気を振り絞って聞いた。
「結崎さんって、彼女いるの?」
いるんでしょう?と聞くべきなのに、まだ現実を完全に受け入れ切れていないもう一人のあたしがいる。
「昔はいたね」
「……今、は?」
「今は……、いない、ねぇ…」
言葉に詰まりながら結崎さんは答える。
どうしてはっきり言わないの?
あなたを好きだと言ったあたしに同情しているから?