その日を境に、結崎さんから、たまに電話が来るようになった。

頻繁にではなく、思い出したように。



時間帯はいつも夜で、残業をしている時だった。

最初は電話で話すだけで幸せだったのに、また、次の欲望が出てくる。



―――会いたい、と。



でも、決して、口にすることはしなかった。

今の幸せに満足しなきゃいけない。

電話をくれるんだから、それで十分じゃないかと、何度も自分に言い聞かせた。



「……どうしたの?」



幸せの絶頂の中、身近なところで事件が起きる。

今年初めての雪が降ったクリスマスの一週間前。

いつものようにバイトに行くと、バックルームで泣きじゃくる志穂ちゃんの姿があった。

そのかたわらには、志穂ちゃんの肩を抱く諒子の姿があった。