だけど、そんな気配すら感じられず、店長がメモを剥がした瞬間、やっと現実に引き戻された。

同時に、自分の自意識過剰さに笑いが出た。


彼女のいる人が、あたしに電話なんて―――。



「結崎さん、元気かなぁ」



村岡くんが店の外に広がる暗闇をぼんやりと眺めながら、掃除する手を止めてポツリと呟く。



「……元気だよ、きっと」

「連絡とか取ってないのか?」

「まさか。あの日で終わりよ」



平然と、まるで他人事のように言うあたしに、村岡くんは笑う。



「寂しくて泣いているのかと思ったけど」



あたしもつられて笑う。



「あたしはそこまで弱い女じゃありません」