しばらくして店から出てきた永輝くんはとても悲しそうな顔をしていたんだ。
そして帰りの車の中で、ぽつりと独り言のように呟いた。
『指輪……買ったよ』
俺は何も言わなかった。
その指輪がただの指輪なんかじゃなくて、結婚指輪であることに気付いていたから……――。
そして、事故に遭って、一命を取り留めた姉さん。
姉さんの指にはめられた指輪は、検査の時に外されたんだけど……。
『これは…、永輝の誕生日だよね?』
優美ちゃん……永輝くんの姉ちゃんが指輪の刻印をじっと見つめて言った。
永輝くんの名前の次に【1005】と刻まれた四桁の数字。
『うん。永輝くんは姉さんの名前と誕生日が彫られている指輪を持ってんじゃないの?』
『でもさ、おかしいよ。どう見てもこれって結婚指輪だろ?普通は入籍した日とか思い出の日を刻むもんなのに』