バラバラになっていた記憶――。


手の中でキラキラと光る、永輝が使っていた灰皿の破片。

ズキズキと痛み出すあたしの身体を冷たく濡らす雨……。



『……救急車!!……早くっ……』

『君!しっかりしろ!!』



次第に遠くなる見知らぬ人たちの声。

ぼんやりとした視界に映った、かんなさんの姿……。



『……柚羽さ……』



あたしは近寄ろうとした彼女を睨みつけ、『来ないで』と力のある限り首を振った。


今、あたしに駆け寄ってきたら……

かんなさんはいろいろ事情を聞かれるに違いない。

もうこれ以上……彼女に辛い思いはさせたくなかった。


かんなさんはしばらく無言であたしを見つめた後、呆然とした表情のままその場を立ち去って行った。


遠ざかっていく彼女の姿を最後まで見届けないまま、あたしの意識はなくなっていって……。


次に目が覚めた時、あたしはアパートのベッドで眠る永輝の隣りにいたんだ。