走り出した遼太郎くんの車は中心街へと向かっていた。



「どこに行くの?」



どこでもいいと思っていたあたしだったけれど、デートしようと無邪気に言う遼太郎くんに釣られて、つい聞いてしまう。


ブルル…ブルル…。


コートのポケットに入れた携帯の振動が身体に伝わる。

そっと取り出して見ると、着信の表示が永輝からとなっていた。



「…永輝…」



その名を聞いた遼太郎くんは、あたしから携帯を奪い取ると後部座席に投げ込んだ。



「浮気者は無視無視!」



バイブ音が鳴っている中、遼太郎くんは笑う。

かんなさんと永輝、二人の姿が頭の中をちらつく。

あたしは「そうだね」と言って、携帯を放っておいた。