「……柚羽ちゃん。……柚羽ちゃん」



居留守を使うのは初めてだった。


かんなさんが店にやって来たその夜。

永輝があたしの部屋に来ることなど絶対にないと思っていたのに、永輝はそれを見事に裏切ってくれた。


静かにノックする音。

何度もあたしを呼ぶ声。



「………」



あんな光景を見た後……

一人になりたくて、居留守まで使っているのに、あたしは永輝に会いたい気持ちを抑えられなかった。



「柚羽ちゃん…」



やっとドアを開けたあたしを見て、永輝はホッとした顔をする。



「…ごめん、トイレ入ってた」