カミソリと電話。

確定はできなかったけれど、ギリギリのところで二つが繋がった。

そして、繋がれた線は、自然とかんなさんへと続く。


疑っちゃいけないと何度も思った。

だけど、他に思い当たる人がいなかった。


あの日以来、非通知での無言電話が続く。

電話の相手は時々『あたしの男に手を出すな』と言葉を発することもあった。

それでもあたしは、非通知の着信拒否を解除しない。


カミソリも続いた。

警察に届けることもしなかった。


そして、永輝に打ち明けることもしなかった。


永輝は自分のことを『悪い人間だ』とあたしに言った。

だけど、あたしはそれ以上に酷い女なのだと思った。


嫌がらせが続いても……

それがかんなさんなのではないかと疑いながらも……

あたしは永輝と会い続けた。

かんなさんが永輝を好きなのだと身を持って知ったのに、あたしは、逃げた。