†Orion†



「それじゃ、仕事がんばってね!」


「あっ、はい。ありがとうございました」



お礼を言うと、杉浦さんは笑顔を残したまま裏口から出て行った。



――そっか。そうだよな……。

俺だけのために、杉浦さんが卵焼き作ってきてくれるはずがないよな。

なにうぬぼれてんだ、俺。



思い切り期待してしまった自分と、杉浦さんの卵焼きが食べられること。

恥ずかしいやら、うれしいやら。


自嘲気味に笑いながら、俺は休憩室のテーブルの上にあったペーパータオルを一枚取り出す。


そして、テーブルの上に無造作に転がっていたペンを手に取り、ペーパータオルにそれをはしらせた。